赤外線透過インキ(IR透過インキ)と隠し印刷のご紹介
本レポートでは、製品のデザイン性・機能性に大きなバリエーションを付与することができる IR透過インキ(赤外線透過インキ)とその機能を利用した隠し印刷についてご紹介します。
1. 赤外線透過インキ(IR透過インキ)とは
IR(赤外線)を通し、可視光(目に見える光)、紫外線(例:太陽光)を遮断するインキです。
透明のシートに印刷することにより形成した塗膜は、指定波長において透過率を調整することも可能です。
塗膜が赤外線以外を通さないため、リモコンの受光部や、携帯電話の赤外線受信部に使用されます。
<反応機構>
- 発信された近赤外線(900-1100nm)がフィルター(IRインキ印刷部)を通過する。
(紫外線、可視光が透過しないため、蛍光灯、可視光での誤作動を防止する。) - フィルターを通過した赤外線はセンサーで受光される。
- センサーの光電管で電気信号に変えられ、増幅され、スイッチを作動させる。
図1: リモコンと赤外線(IR)センサーのメカニズムとIR透過インキ
2. 当社IR透過インキの特徴
①顔料系インキ
一般的にIR透過インキでは染料系が有名ですが、染料系は各種耐性が弱く、スキージや版などを染めてしまうという欠点があります。そのため、顔料系のIRインキを推奨します。
②色相
IR透過インキは、紫外光・可視光をカットし、赤外線透過機能を持ち、且つ、フィルターの内部構造が外から見えなくするため 色相は黒色系(表面色)になっています。
機能上色相調整には制限がありますが、透過色はコントロールすることができます。(透過色により透過率が若干変化します) また、赤外線透過率が10-20%程度低下しますが、メタリック調インキとの重ね印刷などで色相にバリエーションをつけることもできます。
図2: IR透過インキの透過色の色相バリエーションの例
③ハロゲンフリーにも対応
IR透過インキのハロゲンフリー化も実施しています。 原材料に塩素(Cl),臭素(Br)化合物を意図的に使用せず、塩素、臭素の量が Cl<900ppm, Br<900ppm, Cl+Br<1500ppmであることをハロゲンフリーとしています。 現在、IPX-HF, MRX-HF, GLS-HFインキシリーズで対応できます
④さまざまな原反への対応
各種インキシリーズでの対応を実施していますので、原反やインキ種についてはご相談下さい。
3. 光透過機能を応用した「隠し印刷」
IR透過インキは、前述の通り透過色のコントロールが可能で、またメタリック調インキとの重ね印刷などで色相にバリエーションをつけることもできます。
そのため、光を当てなければ見ることが出来ない印刷「隠し印刷」で様々な装飾をすることが可能です。
注1)透過色により透過率が若干変化します。
注2)メタリック調インキとの重ね印刷などで赤外線透過率が10-20%程度低下します。
様々な可視光の透過インキにメタリック調インキを重ね印刷した「隠し印刷の例」
以下は、IR透過インキにメタリック調インキを重ね印刷したシートの写真とそのシートの下から光を当てて可視光線を透過させた写真です。
光を下から当てる前に隠し印刷されている内容を判別出来ないことがおわかり頂けます。
図3:IR透過インキにメタリック調インキを重ね印刷シート(通常時と下から光を当てた時)
以下は、IR透過インキにメタリック調インキを重ね印刷シートの拡大写真です。
拡大しても隠し印刷の内容が全く判別出来ないことがお分かり頂けます。
図4:IR透過インキにメタリック調インキを重ね印刷例(拡大写真)
以下は、下から光を当てた時の拡大写真です。
透過色のバリエーションを組み合わせることで今までにないデザインが可能となります。
図5: 上記シートに下から光を当てた写真(拡大写真)
4. 代表的な透過率(グラフ)
上記の表は当社のIR透過インキの透過率曲線の一例として、MRXインキ(原反:MR200)、GLSインキ(原反:ガラス)の一層、二層の透過率を記載しています。
<グラフの説明>
透過率グラフは横軸が波長(nm(ナノメートル))、縦軸が透過率(T%)を表しています。T%が高いほど、その波長の光を通すことになります。 可視光領域が波長380~780nm、それより短い波長は紫外線、長い波長は赤外線です。
※一般的に透過率と言われているものは、380nm~780nmの各点の透過率の平均値を表します。